仙石浩明の日記

2008年6月30日

故障した HDD WD10EACS を RMA (Return Merchandise Authorization, 返却承認) 手続きで交換してみた hatena_b

廉価な 1TB SATA ハードディスク ドライブ (以下 HDD と略記) として有名な、 Western Digital 製 WD Caviar GP WD10EACS は、 省電力・静音を謳っている。 環境に優しいのは結構なことだが、 その実現方法:

IntelliPower - きめ細かく調整された ディスク回転速度 転送速度 及びキャッシュサイズの調和により飛躍的な省電力と確実なパフォーマンスを提供します
IntelliPark - 風損を減らす為のアイドル時の自動ヘッド退避によりドライブは消費電力を低減する
IntelliSeek - 電力消費量、ノイズおよび振動を低減させるために、最適なシーク速度を計算します。

のうち、特に「アイドル時の自動ヘッド退避」というのがいただけない。 ヘッドを退避すれば空気抵抗が減ってモーターの負荷が減るから 低消費電力が実現できる (実際、アイドル時の消費電力は際立って低い)、 ということなのだろうが、 常時使用する PC (特にサーバ) だと「自動ヘッド退避」の回数が とんでもないことになる。 SMART 情報を見ると:

# smartctl -a /dev/sdb
smartctl version 5.37 [i686-pc-linux-gnu] Copyright (C) 2002-6 Bruce Allen
Home page is http://smartmontools.sourceforge.net/

=== START OF INFORMATION SECTION ===
Device Model:     WDC WD10EACS-00ZJB0
Serial Number:    WD-WCASJxxxxxxx
Firmware Version: 01.01B01
User Capacity:    1,000,204,886,016 bytes
        ...
Vendor Specific SMART Attributes with Thresholds:
ID# ATTRIBUTE_NAME          FLAG     VALUE WORST THRESH TYPE      UPDATED  RAW_VALUE
        ...
  9 Power_On_Hours          0x0032   095   095   000    Old_age   Always   3826
 12 Power_Cycle_Count       0x0032   100   100   000    Old_age   Always   24
192 Power-Off_Retract_Count 0x0032   200   200   000    Old_age   Always   19
193 Load_Cycle_Count        0x0032   197   197   000    Old_age   Always   11327
        ...

わずか 3826 時間 (159日、約5ヶ月) で、 実に 11327回もの自動ヘッド退避が行なわれている。

この異常な回数の自動ヘッド退避が原因かどうかは分からないが、 この 1TB HDD は 2007年11月30日に 28140円で購入してから わずか 5ヶ月余りの 2008年5月2日に故障した。 こんなに早く故障するとは思ってもいなかったので、 T-Zone の延長保証 (200円の追加で通常3ヶ月保証を最長6ヵ月保証) を掛けていなかった。 6ヶ月ではどーせ故障しないから保証を掛けるだけ無駄と判断したのだった (ついでに言うと、6ヶ月では故障しないだろうと高を括っていて、 まだ一部バックアップしていないデータがあったので、 復旧にえらく手間取った。1TB もあると復旧も一筋縄にはいかない)。

運が悪かったとあきらめるしかない (二度とグリーン・パワー・ハードディスクは買わないぞっ!) と思っていたら、 RMA (Return Merchandise Authorization, 返却承認) という メーカによる保証があるということを同僚から教えてもらった (社内IRC で HDD の故障を嘆いていたら、哀れに思って教えてくれたらしい ^^;)。 RMA番号を取得した上で故障品をメーカへ送ると、 代替品を送り返してくれる、という保証。

ステップ3
製品が故障していて交換が必要と判断された場合、 RMA タイプを下から選択して RMA(返却承認)手続きを開始してください。

Standard Replacement
お客様から故障製品を受け取ったあとに代替製品を送付します。 RMA が作成されてから30日以内に故障製品を返送してください。

Western Digital の エンドユーザー向け保証確認ページで、 故障した HDD のシリアル番号を入力してみると、

交換に適合するドライブ

おお、「限定保証期間内」と表示された。 有効期間は再来年の 12月まで、三年間もあるらしい。 もしかしたら交換してもらえるかも?と期待が膨らむ。 といっても RMA なんて今まであることすら知らなかったわけで、 どうやって故障品を送ったらいいのか見当もつかない。

まず EMS(国際スピード郵便) のページを見てみると、 EMS ラベル印字ネット受付サービス なるものがあるらしい。 単に、「ご依頼主」「お届け先」の住所を印字した EMSラベルを 届けてくれるだけのサービスであるが、 郵便局に行かなくても EMSラベルを入手できるのは有難い。 「お届け先」は、 この時点ではまだ分からなかったので空欄にして、 「ご依頼主」は、自宅住所を記入して申し込んでみる。 一週間ほどで EMS ラベルが 5枚 (一度の申込みで最大5枚まで) 届いた。

宛先住所 (RMA を作成すると表示される。 RMA 返送先住所の一覧ページ で調べることもできる) を、 手書きで記入するとこんな感じ:

EMSラベル

次に問題となるのが HDD の梱包である。 そもそも HDD なんて発送したことがないから、 梱包に適した箱なんて持っていない (買うときはいつもバルク品を買ってるので、箱なんかには入っていない)。 どうしたものかと思っていたら、 4月29日に買った安物ギガビット・スイッチング・ハブ (5ポート 2802円) の箱が目に留まった。 HDD を入れるのに丁度よさげな大きさである。 これを裏返しにする:

裏返しにした箱
バルク品を購入すると、 ときどきリテール品の箱を裏返しにした箱に入っていることがある。 裏返すと無地 (というかダンボール地) になる箱が多いので、 箱を流用したいとき裏返すのは便利なテクニックだと思う。

故障した HDD (故障しているので思うように読み書きできないのだが、 無理矢理動かしてランダムデータを全周に何度も書込んだ) を、 静電防止袋 (購入時に入っていた袋) に入れて、

静電防止袋に入れたHDD

次にエアークッション (いわゆる「プチプチ」、使用済シートを大量に確保してある) でグルグル巻きにして、 前述の裏返しした箱に入れる。 885g だった。 900g まで 1660円で、1g でも超えると 1800円なので、 丁度良い按排だった (ちなみに 800g までなら 1520円)。

エアークッションで包んで箱にいれる

以上で、発送の準備が整った。 そこで、前述したエンドユーザー向け保証確認ページで (故障した HDD のシリアル番号を入力した上で) 「RMA作成」ボタンを押す。 すると RMA 番号と送付先住所が書かれた 「Western Digital RMA(返却承認)送り状/明細書」が表示される (6/23 16:47)。 前述した EMS ラベルに、この送付先住所を記入。 表示されたページには、

海外のお客様: お客様の便宜を考慮し、 提供される送り状/明細書(Proforma invoice/packing list)を 税関向けの送り状として使用しても構いません。 フォームに署名と日付を記入の上(適用される場合)、同梱してください。

とも書いてあったので、このページを印刷、署名して郵便局に持参する。 郵便局で、インボイス (INVOICE) を書くように言われるので、 この送り状を見せると、 インボイスを手書きせずに済む (宛先住所が結構長いので、その場で記入するのはちょっと手間)。

また、このページから RMA ラベルを印刷することができる。 つまり RMA 番号のバーコードだが、このラベルが箱に貼ってあると、 交換が迅速に行なわれるらしい。 たくさん印刷して箱の全ての面に貼り、 さらに RMA 番号をマジックで手書きした (上面は EMSラベルを貼るために空けてある)。

箱の外側にRMA番号を記載

EMS は配達状況を Web 上で確認できる。 13桁のお問い合わせ番号を入力して配達状況を表示させてみると、 シンガポールのフレクストロニクス (世界第二位の製造代行企業) まで一日強で届いていることが分かる (日本国内の地方の工場へ送るよりも早いような...?)。

状態発生日状態取扱店名
6/24 10:59引受郵便局
15:22通過川崎港支店
17:18到着東京国際支店
17:41発送東京国際支店
6/25 09:29到着SINGAPORE EMS D
15:37お届け済みFlextronics Manufacturing

あとは HDD が送られてくるのを のんびり待つだけと思っていたら、 わずか一日後 6/26 18:44 に Western Digital からメールが来た。 しかし文字化けがひどくて読めない。 最初は何語で書いてあるかすら判然としなかったのだが、 どうやら Shift JIS で書かれた文面を quoted-printable エンコードする際に なにか問題があったようだ。 例えば 0x82 が「,」に、0x95 が「.」に置き換わってしまっている。 置換が規則的でないので、 暗号解読よろしく一文字一文字置き換え規則を推測していくしかない (7/3追記: 文字化けメールを解読してみた)。

これは文面を再現するのに時間がかかりそうだなぁ~と思っていたら、 6/28 15:34 日通航空(ペリカン便)で自宅に HDD が届いた。 あまりの早さに、 もしかして交換されずにそのまま送り返されたのかと思ったほどである。 FedExの貨物追跡ページ で調べてみると、

現地時間スキャン情報場所・配送状況
6/26 15:26 FedEx電子ツールで出荷書類を作成、
貨物情報はFedExに送信済み
17:02集荷完了 SINGAPORE SG
19:54出荷地のFedEx営業所を出発 SINGAPORE SG
22:07輸送中/処理中 SINGAPORE SG
6/27 01:00FedEx経由地に到着 SUBIC BAY FREEPORT PH
02:34FedEx経由地を出発 SUBIC BAY FREEPORT PH
11:09輸送中/処理中 NARITA-SHI JP 通関中
14:44貨物リリース (通関許可済み) NARITA-SHI JP
6/28 15:34配達完了 KAWASAKI JP

シンガポールからフィリピン、成田を経由して川崎まで丸二日で届くのか...

というわけで、6/24 10:59 に故障した HDD を発送して、 わずか 4日後の 6/28 15:34 に交換品の HDD が届いた。 しかも復路の送料はメーカが負担してくれる。 代理店/販売店保証による修理/交換に比べて、 圧倒的に早く、手軽で、費用もかからず、しかも保証期間が長い。 HDD の購入は RMA 保証があるものを選びたい。

Filed under: ハードウェアの認識と制御 — hiroaki_sengoku @ 08:12

17 Comments

  1. 結局、メールにはなんて書いてあったのでしょうか?

    Comment by 通りすがり — 2008年7月2日 @ 00:36

  2. やっとなんとか一息

    某Web連載:前週分まだ 某Web連載:今週分まだ 某Web連載:7月分お題決定…

    Comment by 新雑記2(不定期日記) — 2008年7月2日 @ 16:57

  3. Audacityのコンパイル

     前にうまくいかなかった、Audacityの再コンパイルだがAudacityWikiにある、Developing_On_Windowsを参考にしたら概ねうまくいったみたい。 WxWidgetsは2.88を用いて、ソースコードの方はCVSのリポジトリから直接持ってきた。どうも、マクロのサポート機能の追加を行う…

    Comment by 緑のボタンを押せ!Pressthegreenbutton ~かなり莫迦オヤジのメ... — 2008年7月5日 @ 13:12

  4. 外国のメーカに修理/交換してもらうとき課税される関税・消費税を減免する方法

    ハードディスクが故障したので、RMA 手続きを行なった上でメーカへ送り返したら、わずか4日で代替品が返ってきた (6月28日)。
    RMA++ と思っていたら、
    10日後の 7月8日にシンガポールのフェデラル・エクスプレスから
    「請求書在中」と書かれた AIR MAIL な封書が送られ….

    Comment by 仙石浩明の日記 — 2008年7月11日 @ 10:26

  5. 私もサーバにこのHDDを使おうとすでに買ってしまってからここの記事を拝見して愕然としたのですが、、、
    海外のサイトを見ていると、wdidle3.exeとかいうツールを見つけました。
    https://bugs.launchpad.net/mandriva/+source/laptop-mode-tools/+bug/59695/comments/438
    これでload/unloadに関係するタイマー値を変えられるようですが、25.5秒にしたら反応がなくなってHDDが死んだとかいう書き込みも海外の掲示板にあったりして、どっちかというとdisableにしてしまうのが良い(成功率が高い)みたいです。
    成功している人はPowerCycle≒Load Cycleになっているようです。
    とりあえず生贄覚悟で試してみるつもりです。

    Comment by GUN — 2008年8月1日 @ 00:59

  6. Western Digital製HDDの罠

    今我が家にはHDDが10数台組み込まれたファイルサーバが24時間稼働しているのですが、
    10数台入っている割には今の世代のHDDの容量と比較すると大して容量が多いわけでも
    なく、ただ電気を食っているだけな感じのサーバだったりするわけですが、もう結構
    長い間使っている…

    Comment by メカメカしいブログ(最近メカメカしくなってきた?) — 2008年8月1日 @ 01:19

  7. 初RMA体験

    夏期休暇に入り時間が取れたので、購入時から各種アップデートやソフトのインストール・アンインストール等

    Comment by おりおんの戯言 — 2008年8月24日 @ 23:56

  8. EACS-ZJB0とD6B0をそれぞれ2台ずつ所持しておりますが、ZJB0の2台についてはLoad Cycle値が数万になっており、D6B0はほぼPowerCycle値と同じ(±1程度)でした。

    Comment by う — 2008年11月7日 @ 16:27

  9. 有用な情報をありがとうございます

    Comment by ぬ — 2008年12月21日 @ 19:33

  10. 初めまして、RMA保障の事が凄く参考になります。
    >しかも復路の送料はメーカが負担してくれる。
    質問ですが、送料はメーカーがいつどのような形で支払ってくれたのですか?
    送る時に着払いOKとか?

    Comment by 名無し — 2008年12月30日 @ 23:41

  11. うちのWD10EACSのS.M.A.R.T情報をみてみたんですが、ロード・アンロード回数が、電源投入回数より少ないみたいです
    ファームは01.01A01です。
    WD10EADSも同様でした

    Comment by 名無し — 2009年1月31日 @ 23:27

  12. うちのサーバに積んでいたWD10EADSもお亡くなりになりました。
    購入後6カ月でした。
    RMAないのでお手上げです。

    Comment by HIRO — 2009年5月31日 @ 14:29

  13. WD10EADS-00L5B1を交換保証(RMA)でシンガポールに送付処置に

    WD10EADS-00L5B1のデータ復旧でいろいろと格闘しましたが、手に負えなかったので交換保証(RMA)を受ける事にしました。
    データだけは救い出せないの..

    Comment by VPN — 2009年12月2日 @ 10:25

  14. HDD の購入は RMA 保証があるものをってのは凄いですね。

    私は知りませんでした。

    Comment by hdd 復旧 — 2010年7月8日 @ 14:40

  15. 私はseagate社のRMAは複数回利用した事があります。
    seagate社は成田の受付に宅配で送るだけなので送料も安く済みます。
    ただ、1度向こうのミスで返送の再着払いで送られてきた事があります。
    この時は15000円程取られました。
    が、日本法人にクレームを付けたらクロネコのおっさんが返金に来ました。
    焦りました。
    ただ注意したいのは販売店によっては
    本来小売り用途ではないOEM品を店頭で売っている店もあるので店頭での確認が必修でしょう。
    これは、特に自店でBTOPCを売っている会社に多いようです。
    BTOマシン用に安く調達しているのでしょうね。
    SEAGATEの場合見分けは簡単です
    HDDのラベルに、This drive is manufacture for OEMと書かれています。
    実際私の地元にある大手系列のパーツショップの店頭にこの表記のhddが小売りされてました。
    こういうHDDにはRMAが無いのでショップの保証オンリーです。
    しかも、ショップの交換対応って2ヶ月ぐらい掛かるんですよねぇ・・・・・・

    Comment by e2 — 2010年10月6日 @ 02:08

  16. My Book Studio 1TB のFireWire 8001カ所が認識されなくなり修理に出そうと
    購入先アップルストアサイトをみたら、サポートは製造メーカーへ直接ご連絡くださいとあり
    手続きを知りたいのでネットで探していたら、仙石様の有用な情報にたどり着け実践したら無事交換できました。
    EMSで送料が¥2700でしたが
    2週間でサイズアップ(1TB~1.5TB)した製品が送ってきたので得した気持ちになりました。

    Comment by 星 幸一 — 2011年5月23日 @ 12:02

  17. はじめまして参考にさせて頂きました。

    以前購入したHDDが故障してしまいました。以前にHDDと個人情報を登録していました。
    それでRMAで製品交換の手続きをしようと思い画面でメールアドレスとパスワードで接続してもパスワードを変更するの画面でログイン出来ません。パスワードを変更して返信メールの新しいパスワードでも同じ症状です。
    仕方なく別のメールアドレスで再度登録しようとしたところ『有効なTEL番号がされていません』となりパスワードも空欄になってしまいます。
    TEL番号は+81-○○○-○○○○と打ち込んだり-を無くして打ち込んだりして色々と試してみましたが『有効なTEL番号がされていません』となりどうしてもログイン出来ません。
    製品の保障期間が5月7日で間も無く終わり連休もあるので心配です。
    なぜログイン゙出来ないのか不明です。
    何か良い方法があれば教えて下さい。宜しくお願いいたします。

    Comment by kan — 2014年4月30日 @ 12:06

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