仙石浩明の日記

2007年6月18日

シアトル モノレールの謎

先日、シアトルへ行ってきました。

シアトルと言えば、モノレール

Westlake Center Mall 駅 (次の写真) と Seattle Center 駅を結んでいます。 シアトル万博 (1962年) の時に開業したそうです。

Westlake Center

上の写真だと分かりにくいかも知れませんが、 モノレールの軌道が二本あります。 向かって左側の軌道に青色の車両が停車していますね。

同じ場所の軌道の部分を反対側から見ると、
↓ こんな感じ。

deadend

初めてこの Westlake Center Mall 駅を見たとき (2007年5月)、 とても強い違和感を感じてしまいました。 そもそも軌道が二本あるのに、 プラットホームが片側にしかないのがとても不自然でしたし、 ↑ の写真を見れば多くの方に同意して頂けるのではないかと思いますが、 二本の軌道が異常に接近しています。 こんなんで本当にすれ違えるのか?と、 誰もが疑問に思うのではないでしょうか。

Westlake Center Mall 駅と Seattle Center 駅とは 1.6km ほどしか離れておらず、 途中に駅がないのはもちろん、 二つの軌道を乗り換えるためのポイント (転轍機) もありません。 つまり、一方の軌道を走る車両は、決して、 もう片方の軌道を走ることはできません。

しかし、冒頭の Westlake Center Mall 駅の写真を見ると、 向かって左側の軌道は、 横のショッピング モールの建物と接していて乗降できそう (実際、モール 3階にモノレール乗り場があります) ですが、 向かって右側の軌道には、 乗降のためのプラットホームが見当たりません。 私はてっきり、右側の軌道は現在は使用されていないのだと思っていました。

ところが、別の日に反対側の Seattle Center 駅を訪れてみると、 Westlake Center Mall 駅で見た青色の車両の他に、 赤色の車両がありました。 下の写真だとちょっと分かりにくいかも知れませんが、 向かって右側の軌道に青色の車両が停っていて、 向かって左側の軌道に赤色の車両が走っています (ちょうどこの駅に入ってきたところです)。

Seattle Center

トポロジー的に考えて、 赤色の車両が走っている軌道は、 Westlake Center Mall 駅へ行くと、 ショッピング モールの建物に接していない側の軌道につながっているはずです。 両方の駅で見た軌道が互いにどのようにつながっているかは、 次図のように、 モノレールの路線に赤色の軌道と、青色の軌道を書き入れてみると一目瞭然ですね。

Monorail Route

赤色の車両が走っている軌道は、 ショッピング モールの建物に接していないのに、 どうやって乗降するのでしょうか? とても謎です。

これはもう、乗って確かめるしかありません。 わずか 1.6km の区間にしては割高な 2ドルを支払って、 到着したばかりの赤い車両に乗り込みました。

発車後、わずか 90秒で Westlake Center Mall 駅に到着。

隣の軌道をまたいで乗降用のブリッジが伸びていました。 確かにこれならプラットホームに接していなくても乗り降りできますね。 と同時に、二つの軌道の間の隙間が、 二台の車両がすれ違うのには全く不十分であることも分かります。

answer

このボーディング・ブリッジは、 青色の車両を運行するときは邪魔になりますから、 プラットホームの下に収納できるようになっています。 赤色と青色の車両を交互に運行したりすると、 ボーディング・ブリッジを出したり引っ込めたりと、 とても煩雑な上に、 下手すると青色の車両がブリッジに突っ込むなどの 事故を起しかねない (下に追記したように実際事故が起きています) からでしょうか、 時間帯によってどちらか一方の車両だけが運行する運用になっているようです。 私が見た限りでは、午前中は赤色の車両のみ、 午後は青色の車両のみを運行しているようでした。

プラットホームに接していない軌道上の車両にどうやって乗降するか、 という謎が解決したのもつかの間、 両方の軌道を同時に使わないなら、 なんで軌道が二本あるの? という新たな謎が生まれてしまいました (^^;)。

軌道の補修工事などを行なう際に、 運行停止を避けるための冗長構成なのか、とも思ったのですが、 所詮 1.6km の区間なのですから、 一週間くらい運行停止したところで 市民生活に影響をおよぼすとは思えません。 かといって建設直後、 万博開催中に補修工事が必要になるほど 脆弱なシステムというわけでもないでしょう。

謎は深まるばかり...


6月15日 追記

私と同じような疑問を持ったかたが既にいらっしゃったようで、

なんてことはない話なのですが,疑問がありました.
このモノレールは複線ですが途中に分岐点のようなものはなく, この5月に乗車した時も単線並列のように見えたのです. シアトルセンターの駅は3面2線構造で問題ありませんが ウェストレイク駅のほうは1面2線なのです.
Red Trainの走る線路はウェストレイク駅にはホームがない状態で, これでどうやってウェストレイクで下車できたのだろうと思ったのでした. 今回に限らずRed Train運転時にはどうしているのでしょう.
ウェストレイク駅では2本の線路の間隔が異常に狭くなっています. ホームがせいもありますが, 2本に同時に車両が停車できないほどの狭さです.

というページを見つけました。 このページからリンクされている Seattle Post Intelligencer 紙2005年11月のモノレール事故の原因分析記事 に、 Westlake Center Mall 建設の際の、 モノレール軌道の移設の説明図がありました。
とても分かりやすい図なので、ここに引用し ↓ 拙訳を付けてみます。

Track Redesign
(1) 1980年代の終わり、モノレール駅一帯を再開発して ショッピングモールを建設する計画が持ち上がった。
(2) 元々モノレール駅があった場所にショッピングモールを建設するため、 モノレールの軌道は建設区画の脇へ押しやられた。
(3) 新しいモノレール駅は、ショッピングモール直付けとなり、 乗客はショッピングモールの 3階へ直接出入りすることになった。
(4) (ショッピングモールに面してない側の)軌道をプラットホームへ近づけるため、 二本の軌道の間の隙間は非常に狭められた。 このため、この駅およびその近辺で、 二つの車両がすれ違うことができなくなった。 先週の土曜日 (2005年11月25日)、 車両のすれ違いが運転手のミスにより駅近く (図中 「SITE OF COLLISION」) で 発生し、 両車両が互いに側面衝突する事故が起きた。

「SITE OF COLLISION」のあたりを Google マップの航空写真で見ると、 二本の軌道の間の隙間が、 ショッピングモールの近くで急に狭くなっているのがよく分かります。 現在のように、常に片側の車両のみ運行するようになったのは、 2005年のこの衝突事故の教訓を反映した結果なのでしょうね。

Filed under: その他 — hiroaki_sengoku @ 06:30

1 Comment »

  1. 読みながら 両方の車両が同時に到着しドアを揃えて開けて乗降してると思っていました とてもミステリアスで interesting story でした

    Comment by Mami — 2008年1月16日 @ 22:03

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