仙石浩明の日記

2008年7月11日

外国のメーカに修理/交換してもらうとき課税される関税・消費税を減免する方法

ハードディスクが故障したので、RMA 手続きを行なった上でメーカへ送り返したら、わずか4日で代替品が返ってきた (6月28日)。 RMA++ と思っていたら、 10日後の 7月8日にシンガポールのフェデラル・エクスプレスから 「請求書在中」と書かれた AIR MAIL な封書が送られて来た。 え~ せっかく RMA を誉め称えるブログを書いたのに、 今になって何か追加で請求されるとわ... orz と、 暗澹たる気持ちで開封してみると...

どきどきしながら「請求書 INVOICE」と書かれた一枚目の書類に目を通すと、 請求額は 1000円。 そんなに高額の請求ではなかったので一安心。 内訳を見ると、

Other Charges  消費税/付加価値税(Consumption Tax/VAT) 500
Other Charges  関税・消費税特別手数料(D/T Advancement Fee)  500
合計(Total) 1,000

関税? 日本って工業製品に対して関税なんてかけていたっけ? と思いつつ
二枚目の「輸入許可通知書」に目を通すと、

税科目税額合計個数
D 関税¥00
F 消費税¥4001
A 地方消費税¥1001

なるほど、 メーカが申告した価格 (CIF) $108.00 に対して約 5% の消費税がかかる、 ということで納税額が 500円なのか。 でも「関税・消費税特別手数料」って何なのだろう? 少なくともこの「輸入許可通知書」には「特別手数料」の文字は見当たらない。

まあ高々 1000円だから払っちゃおうか、という考えが頭をよぎる。 ご丁寧にコンビニ払いの用紙まで添付されている。 コンビニ払いか銀行振込を選択可能なようだ。

消費税ってのはいわゆる付加価値税のことである (なぜ VAT (= 付加価値税) という世界的に一般的な名称ではなく、 「消費税」という聞きなれない名称にしたのやら...)。 物品に価値が加わったときにその増分に対して一定割合 (現在は 5%) を納税するのが趣旨であるが、 故障したハードディスクを交換したことが「付加価値」に該当するのだろうか?

確かに私にとっては、 故障したハードディスクは価値ゼロで、 交換してもらったハードディスクは 13000円 (現時点での WD10EACS の小売価格) くらいの価値があるから一見価値が増えたように見えるが、 より厳密に考えると「故障したハードディスク」には「RMA 保証」がついていた (だからこそ交換してもらうことができた) ので、 13000円の価値があったと言ってもよい。

そもそも消費税は、このハードディスクを買ったときに支払っている。 当時は 28140円もしたから、なんと 1340円 (本体価格 26800円の 5%) も、 消費税を払っているわけである。 この上、さらに 500円も消費税を払わされてはかなわない。 これは同一物に対する二重課税ではないのか~っ。 もんもんと考えているうちに、だんだんハラが立ってきた (^^;)。

というわけで、 なんとかこの理不尽な課税を回避できないか試みることにした。 もちろん、たかが 500円の課税であるので回避できたところで、 かけた労力に見合うわけはないのだが、 まあなにごとも経験である。 軽減できる税金は最大 500円であっても、 軽減交渉という経験はプライスレス。

フェデラル・エクスプレスからの請求書には、 末尾に次のように書いてあった。

Inquiry by e-Mail
e-Mail による請求・お支払に関するお問い合わせ
電話、FAXに加えe-mail による請求・お支払に関する お問い合わせも承ります。
アドレス: seikyukanri@npac.fedex.com

e-mail で問い合わせできるというのはとてもありがたい。 なんせ取り返そうとしている税金はわずか 500円なのであるから、 電話で問合わせたりしたら電話代だけで赤字になってしまいかねない。 とりあえず次のようなメールを書いてみた:

Subject: 消費税立替金に関して
Date: Wed, 09 Jul 2008 16:34:16 +0900

フェデラルエクスプレス御中

仙石です。昨日、郵便で消費税の請求書が届きました。

顧客番号: JPNXXXXXXXXXXX
請求書番号: X-XXX-XXXXX
請求書発行日: 06/30/2008
合計: JPY 1,000

これは、輸入した物品に関して、

消費税 500円
消費税特別手数料 500円

の合計 1000円の請求であると理解したのですが、

今回輸入したのは、ハードディスクであり、これは故障品の交換品としてメーカ
から送付されたものです。つまり次のような経緯となっています。

(1) 2007年11月30日  新品を日本国内で購入 (28140円 消費税込)
(2) 2008年 5月 2日  故障
(3)        6月24日  故障品をメーカ(シンガポール)へ発送
(4)           26日  故障品に対する代替品をメーカが発送 (CIF $108)
(5)           27日  通関

すなわち物品 (ハードディスク) の消費税は既に 
(1) の段階で 1340円を納入済です。

(4) において物品に対して付加価値が加わったわけではないことを考えると、
(5) で再度消費税を納入することは同一物品に対して消費税を二度支払うことに
なってしまいます。

これは二重課税に相当すると思われるので、消費税額に関して異議申し立てを行
なおうと思います。すでに御社が立て替えてしまった 1000円について、どのよう
に取扱うべきか教えて頂けると幸いです。

お手軽なのでまずはメールで問合わせを行なったわけであるが、 フェデラル・エクスプレスはあくまで通関にかかる税金を 「立て替えて」くれただけであるので、 課税に関する文句をフェデラル・エクスプレスに言うのはお門違いであろう。

課税に対する苦情はやはりお役人に対して言わないと、 ということで翌日 税関相談官に電話してみた。 税関相談官というのは、

税関相談官は、輸出入手続等に関する相談・苦情を処理することにより、 相談等の依頼者に対し正しい知識を供与し、 あるいはこれらの者の誤解を解き、 更には、必要に応じ手続等の是正、改善措置を講ずることによって、 適正かつ円滑な税関行政の推進を図ろうとするものであります。

という人らしい。 故障したハードディスクを交換するために海外のメーカに送ったら、 戻ってきたときに税関で消費税を取られた旨を説明すると、 いきなり「輸出時に 11条の申請を行ないましたか?」と聞かれた。 申請もなにも、そもそも11条って何やねんと言いたくなるのを抑えて、 その申請を行なっておかないとダメなのですか?と聞くと、 「そうなんですよ~」という勝ち誇った声が返ってきた。

法律の素人 (= 私) に対していきなり「11条」などと専門用語を振り回したり、 「輸出時に申請しなかったオマエが悪いんだから税金払うのはアタリマエ」 的な言い様は、 「相談等の依頼者に対し正しい知識を供与」すべき使命を負う小役人として、 どうよと思ったが、 ここでゴネたりしていては電話代だけで 500円を突破しかねない。 そこで「11条」という手がかりを与えてくれたことに感謝の意を表して、 早々に電話を切った。 ちなみに「関税・消費税特別手数料」についても質問したら、 それはフェデックスさんが請求している手数料だろう、とのこと。

税関に関係する法令の 11条を探すなんて google さまなら朝飯前である。
すぐ該当する条文を見つけた:

(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税)
第十一条  加工又は修繕のため本邦から輸出され、 その輸出の許可の日から一年 (...括弧内省略...) 以内に輸入される貨物 (...括弧内省略...) については、 政令で定めるところにより、 当該輸入貨物の関税の額に、 当該貨物が輸出の許可の際の性質及び形状により輸入されるもの とした場合の課税価格の 当該輸入貨物の課税価格に対する割合を乗じて算出した額の範囲内において、 その関税を軽減することができる。
関税定率法 から引用

要約すれば、 逝って来いで輸出したときと輸入したときの性質・形状が同じならば、 関税はかからないよ、ということになる。 これは関税に関する法律であるが、 消費税に関しても同様の法律があるはずと探してみると、 ほどなく見つかった:

(加工又は修繕のため輸出された課税物品に係る消費税の軽減)
第十五条の二  加工又は修繕のため本邦から輸出され、 その輸出の許可の日から一年(...括弧内省略...) 以内に輸入される課税物品(...括弧内省略...)については、 政令で定めるところにより、 当該課税物品に係る消費税の額に、 当該課税物品を関税定率法第十一条(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税) の輸入貨物とみなして計算される同条に規定する割合 を乗じて算出した額の範囲内において、 その消費税を軽減することができる。

消費税についても、関税定率法第十一条の趣旨が適用されるということのようだ。 つまり同じものを海外と往復させても消費税は課税されない。 今回の場合、 修理ではなくて交換なので断言はできないが、 修理の際に一部のパーツを交換することはよくあることだし、 ハードディスク自体が一つのパーツであるわけだから、 全交換も修理の一形態と言えなくもない。

次にどういう行動をすべきかは、 フェデラル・エクスプレスの返事を見てから考えよう、と思っていたら その日のうちに返事がメールで届いた。 この手の問合わせって 3営業日とか 5営業日かかるものだと思っていたので、 恐ろしく素早い対応である。 RMA といい問合わせに対する対応といい、 この迅速さがサービスの世界標準なのか。

From: "フェデックス請求管理部" <seikyukanri@npac.fedex.com>
To: Hiroaki Sengoku <sengoku@gcd.org>
Subject: Re: 消費税立替金に関して
Date: Thu, 10 Jul 2008 17:41:59 +0900

仙石 浩様
 
 ご利用有難うございました。

 経緯の内容から今回は代替品ですので荷送人が本来負担しなければならないと 
 思います。つきましては請求金額を取り消しさせて頂きますのでよろしく
 お願い致します。
 お手数おかけいたしました。

 ご利用ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。

フェデックス 
カスタマーサービス 
請求担当 ○○
電話 0120-732-327 

荷送人というと Flextronics Manufacturing (つまりハードディスクのメーカ) なのであるが、 メーカが代替品の消費税を負担しなければならない、というのは初耳である。 有償修理ならば、その修理代金に消費税がかかるのは当然だと思うが、 無償交換でも消費税がかかるのだろうか? まあ「請求金額を取り消しさせて頂きます」と言ってくれているので、 このまま放置しても構わないだろう。

Filed under: ハードウェアの認識と制御 — hiroaki_sengoku @ 10:25

11件のコメント

  1. ググって見ると、業者が払いすぎた税金を還付してもらうことが出来る場合があるようです。今回の件が該当するのかはよく判らないです。
    http://www.ai-gokaku.com/rcs/bbs_general/yybbs.cgi?mode=res&no=3919

    コメント by omaya — 2008年7月11日 @ 21:50

  2. 大変勉強になりました

    コメント by l — 2008年8月2日 @ 00:25

  3. RMAの不思議・・・が、スッキリしました!

    コメント by Kei — 2008年8月9日 @ 04:38

  4. 会社としては僅かな投資で賄えるのなら信頼の方を重要視したい、
    と考えたような気がしますね。

    コメント by fel — 2008年9月27日 @ 07:30

  5. 勉強しないと○される、ということですねぇ。

    コメント by Forth66 — 2008年10月7日 @ 12:03

  6. WDへRMAするために、こちらを参考にさせて頂いています。
    私も最寄の税関相談官に連絡したところ、
    「個人で手続きできるし、もちろん減免もできるが、手続きが煩雑なのでどちらかと言うと事業者向け」
    「最寄の税関に直接足を運んで手続きを執ることになるそうなので、数百円程度なら割に合わないと思う」という説明でした。
    参考までに。

    コメント by 後ろから来る人 — 2009年1月13日 @ 14:04

  7. つい最近の私の場合、関税は0円でした。すべて元払いですから掛かりませんとUPSにいわれた。

    コメント by 昨日 — 2009年2月8日 @ 00:37

  8. WDのRMA梱包情報に課税されない為の処置が書いてあります。
    送り状に「In Warranty Replacement」と印刷。これは、ドライブが交換対象であって、新品でないことを示すものとして税関が確認するためです。

    コメント by 念のため — 2009年11月15日 @ 00:18

  9. 関税定率法第十一条の手続をしなくとも、荷送人は消費税の負担をしなくても良いとても簡単な方法があり、通常の企業はこの方法をとっています。
    11条はとても面倒なので。

    FedExさんの言う負担は、事実上の一時負担という意味です。

    折角なので調べてみては如何でしょうか?

    コメント by 今頃ですが — 2010年2月5日 @ 09:29

  10. アンティークを海外から購入するときにも注意が必要です。100年以上前の物は輸入税は免税で消費税だけがかかるのですが、アンティークであることの証明書を要求されます。例えば米国から購入する場合は米国の鑑定者の証明が必要です。ただ、お店が発行する鑑定書で十分だと思ったら大間違いです。私の場合、お店のアンティークディーラー兼鑑定者の署名入りの書類を提出したところ、「この方の資格はどういうものですか」と聞かれ、その資格を証明するものがないので認められないと言われました。日本のように資格文化でない米国では、経験と実力とお店の知名度が鑑定の信用度を左右します。30年もアンティークディーラーとして認められている人に「貴方の資格を教えてください」などと言うと、日本人の常識を疑われます。しかも、当方のような収集家が見ればアンティークであることは明らかなのですが、そういうことは関係ないみたいです。こちらも意地になって、たった数千円のために高い鑑定料金を支払いましが、結局泣き寝入りをしました。これに懲りて、鑑定者養成講座を修了した「有資格」鑑定者に依頼して鑑定書を提出したこともあります。するとその時は、「美術館の鑑定でないので無理ですね」と言われました。難癖としか思えません。上の記事にも書いておられるように、大阪税関の役人は態度も横柄で非常に失礼です。あのような職務に就いていながら、国際間の文化の違いや物を見る目は訓練されていないようです。早く自由貿易が実現し、このような役所がなくなる日を待ち望んでいます。

    コメント by retron — 2010年11月18日 @ 21:38

  11. とても参考になりました。

    私も開発評価用にUSから貸与されたものが壊れて、その修理完了品がUPS経由で返送されてきたので、同様なケースかなと思い、UPSに非課税だろうとPushしてみたのですが…USに送る際にあらかじめ申告していないと適用されないということで減免措置されませんでした。またUPSの話によると申告するのにも手数料がかかるようです。

    http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/extsukan/5005_jr.htm

    その場合、その機材を新品で買ったとしたらの価格に応じた消費税か、もしくは修理品をUSに返送したときの申告価格に応じた消費税のどちらかで課税されるようです。(但し、後者の場合、当時の輸出申告書/許可書/Invoice/運賃のB/Lの4つについて提出を要求されました)

    コメント by komchiro — 2011年9月26日 @ 18:12

この投稿へのコメントの RSS フィード。

現在、コメントフォームは閉鎖中です。