仙石浩明の日記

2006年7月29日

「ソフトウェア開発」は「モノ作り」ではない (2)

「ソフトウェア開発」は「モノ作り」ではない」を とても多くの方々に読んで頂けた。 コメント/トラックバックを頂いた方々、 はてなブックマーク して頂いた方々に 感謝申し上げる。

これだけ多くの方々に読んで頂くと、 誤解するかたも少なくないようだ。 まあ、私の文章力が至らないのだから仕方ないが、 誤解したかたも、もう少し説明を補足すれば理解し合えるのかも知れず、 もう少し書いてみようと思う。

一番の失敗は、 日経ビジネス online の記事を引用してしまったために、 この谷島氏の記事「ITの常識は世間の非常識」の主張が、 私の主張 (の一部) と思われてしまった点だ。 谷島氏の記事では、

「そもそも情報システムと自動車を同一視することもいかがなものかと。 情報システムを何か出来合いの産業機器のように受け止めているわけですよね。 やはり、顧客の意思が反映されるソフトウエアというものをお分かりではない、 ということでは」

ということにまで言及しているが、 私が主張したかったのは「ソフトウェア開発とは何か?」ということであって、 私が言う「開発」とは狭義の開発であり、 谷島氏のメインの主張である要件定義の話まで踏み込むつもりはない。

言うまでもなく要件定義はシステム開発を請け負うにあたって 最重要なステップであり、 要件定義の良し悪しがプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではない。 しかし、だからといって他のステップを 無視してしまっていいというわけでもないだろう。

「システムを開発する技術者は、コンサルタントを目指すべし」くらいの勢いで 主張されるかたも多いし、 日経BP 等の Web ページを見ていると、 技術者にとって必要なスキルはコミュニケーション能力だ、 という主張ばかりが目立つ。 確かにコミュニケーション能力は重要ではあるが、 技術者の本分はあくまで「技術力」であって、 それをないがしろにしていいわけがない。

なので、私が主張したいのはあくまで、 技術者がどうすれば技術力を磨くことができるか、 という点にある。 そして、技術力を磨く上で最大の障害になっていると私が感じるのが、 ソフトウェア開発が何であるか、 技術者をとりまく人たち (特に経営側) が分かっていないことが多いし、 いやそれどころか当の技術者さえ、きちんと理解できていないことがある、 という点なのである。

ソフトウェア開発が何であるかが分かっていなければ、 すなわちソフトウェア開発を「モノ作り」と考えていては、 技術者を育てようとしても、 あるいは技術者自身がスキルアップを目指していろいろ勉強しても、 本質を外して徒労に終わるリスクが高い。 せっかく勉強するなら、きちんと本質をとらえて、 「技術力」を確実に伸ばしていって欲しい。

Filed under: 技術と経営 — hiroaki_sengoku @ 07:54

6 Comments »

  1. まあ、コストの話は経済の話、ひいては社会科学の話なので、従業員はどのようにしてしてどこまで経営者の夢についていけるか、というお題になりがちです。
    プログラミングや、いわゆる情報工学は学問としての側面があります。
    それは本来楽しいものなので、誰に言われるまでもなく時間さえあれば皆研鑽に励むものです。
    もちろん家内制手工業の工芸規模から脱することを技術者が望む必要はありません。
    仕事の現場では実力をつけたり、科学的で説得力ある主張をしても受け入れられるわけではなく、ほとんどのトラブルは政治的発言力の弱さから起きるのです。
    それがコミュニケーション能力の低さと呼ばれているに過ぎません。
    普遍的な物理法則が支配する世界ならまだしも、ソフトウエアでは開発環境もターゲットも多岐に渡りますし、おそらく経済や国家の形が変わる時代まで体系づけるのは無理でしょう。

    Comment by i — 2006年7月31日 @ 23:21

  2. ソフトウェア

    ■ 読み比べて、面白いと思った…
    ITの常識は世間の非常識
    「ソフトウェア開発」は「モノ作り」ではない
    仙石浩明の日記にある「決め」の一言について…
    >問: 「ソフトウェア開発」が「モノ作り」でないなら、何??
    )

    Comment by やの日記 — 2006年7月31日 @ 23:45

  3. [ソフトウェア開発][雑記]他人にコミュニケーション能力を求める者はコミュニケーション能力が乏しい

    「システムを開発する技術者は、コンサルタントを目指すべし」くらいの勢いで主張されるかたも多いし、日経BP 等の Web ページを見ていると、技術者にとって必要なスキルはコミュニケーション能力だ、という主張ばかりが目立つ。確かにコミュニケーション能力は重要ではある

    Comment by 酔狂人の異説 — 2006年8月4日 @ 23:25

  4. 『「ソフトウェア開発」は「モノ作り」ではない 』を読んで

    以下は、「ソフトウェア開発」は「モノ作り」ではない を読んでのコメントです。 私

    Comment by ronSpace — 2006年8月12日 @ 22:17

  5. 私も以前から同じような事を思っていました。
    商品作成の工程には、
    1.研究開発工程
    2.量産工程
    の2段階あるわけですが、
    ソフトウェアは量産工程が無い(に等しい)ので
    開発工程だけだ、という事ですよね。
    自動車でも研究開発工程では色々試行錯誤してるに
    決まってると思うんですが、そこを見ずに(見えずに、かな?)
    量産工程だけを見ると、いかにもシステマチックに
    うまく工程が動いているように見えてしまうんでしょう。
    ハードウェアの量産は「既に有るモノ=モデル品」を
    全く同じ質で早く安く作る事ですが、
    それはモデルとなるモノが「既に有る」から可能なんであって、
    ソフトウェアは同じものなら「コピー」で済むので
    作る必要があるものは常に「今までに無いもの」なんですね。
    (まあ、似たようなコードを諸事情で何回も書いたりもしますが)

    Comment by ライドオン — 2007年2月8日 @ 14:32

  6. エントリーもそうだけどコメントやトラックバックが興味深いです。
    とりあえず飛ばし読みするだけでも価値があります。

    Comment by ba-m-bi — 2007年6月25日 @ 14:05

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